アンジュエールの道標

「はい、これ」


彼が差し出したのは、


「名刺?」


優子の言うとおり、四角い名刺だった。


「困ったら連絡ください」


彼はそう言って私にそれを持たせると、ニコリと笑って、


「ほら、白夜行くよ」


と真っ白な猫と一緒に歩いていった。


「アンジュエール?」

「えっ?」


優子の声に自分の手にある名刺を見る。

確かに『アンジュエール』と書いてある。


「ってか、『夢工房』ってなに?」

「……そんなの」


私に聞かれても困る。

< 8 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop