アンジュエールの道標
「はい、これ」
彼が差し出したのは、
「名刺?」
優子の言うとおり、四角い名刺だった。
「困ったら連絡ください」
彼はそう言って私にそれを持たせると、ニコリと笑って、
「ほら、白夜行くよ」
と真っ白な猫と一緒に歩いていった。
「アンジュエール?」
「えっ?」
優子の声に自分の手にある名刺を見る。
確かに『アンジュエール』と書いてある。
「ってか、『夢工房』ってなに?」
「……そんなの」
私に聞かれても困る。