アンジュエールの道標
「ここの婆さん、俺のこと毛嫌いしてたからさ」
そう。大の動物嫌い。
だからハルが近寄ろうとするものならホースで水を撒き散らしたり。
と、いうか、ご近所付き合いも全然しないお婆さんだった。
一人暮らしらしいけど、彼女の家族構成は誰も知らない。
ただ家に引きこもって誰とも口を利かず。
へんくつなお婆さんで有名な『香川』さん。
そういえば、ここ何日も姿を見てない。
でも、そんなことはいつもの事で気にとめるご近所さんなんて誰もいないだろう。
「鼻が曲がりそうじゃ」
顔を歪めてそう呟く白夜さんに永久さんも「うん」とお隣さんちを見上げた。