アンジュエールの道標
お隣さんちの玄関にちょこんと座るハルが居た。
「うん、見た目はね」
「猫が喰われて姿のっとられるなんて末代までの恥じゃな」
「……るさいなぁ」
その光景を拗ねるように見てるのは人の形をしたハルで、
「帰れ」
「――!?」
地面が震えるような低い声でそう言ったのは猫のハルだった。
「まぁまぁ、白夜。とりあえず生きててよかったじゃないか」
「よくない。わしが喰うてやろうか?」
「あんなの食べたら、食中り起こしちゃうよ?」
「……」
「それに、少し白夜の手には負えないかな?」
ニコリと笑う永久さんに、白夜さんはチッとこれ見よがしに舌打ちをした。