アンジュエールの道標
そう、何かが飛んできたんだ。
それは空気の刃って言えばいのかな?
とにかく猫のハルが総毛立ててこちらに向かって「シャーッ!」と叫んだ瞬間、空間が裂けてその裂け目が真っ直ぐに私に飛んできて。
今、私は白夜さんに覆いかぶされて地面に尻餅をついてる状態。
「怪我は?」
「えっ? あ……」
手が、痛い。
そっと見ると尻餅をついた瞬間、手をついてほんの少しすりむいてた。
って、そんなのどうでも――。
「わ、私より白夜さんのほうがっ!」
背中がざっくり切られて真っ白な長い髪が真っ赤に染まるほど。
その赤い髪の向こうに顔を真っ青にした人間のハルが見えた。
「丁度いい」
「えっ?」