アンジュエールの道標
意味の分からない言葉に目の前の白夜さんに焦点を合わせると、
「少し貰うぞ」
そう言ってすりむいた私の手に唇を当てた。
「――んっ」
熱い。
怪我をしたから熱いんじゃなくて、白夜さんの唇が、熱い。
その熱が全身に感染して、頭の芯までぼーっとしてくるような――。
「白夜、その程度にしておいて」
頭の片隅で永久さんのそんな声が聞こえて。
目を開けると、
「……くっくっく」
怪しく笑う白夜さんが居た。