c-wolf
「あのさぁ……」
「んー?」
いつも通り、ゲームに夢中な横顔に声をかけたら、空返事みたいな声が返ってくる。
ちゃんと聞いてはいるんだと思うけど。
まぁ、これから話そうとしていることも、とくに重要ってわけではないし、聞いてなかったとしても、それならそれで別にいいんだけどね。
「何で性格って人によって変わるんだろうね」
「んー?」
「やっぱ、育ってきた環境なのかなぁ」
「……んー」
「性格が違ったら、また違う性格を出すわけだし……」
「んー」
「僕の場合、性格が一番変わるのは仕事でしょー、趣味でしょー、友達ーでしょー、恋人でしょ?」
「んー」
「気持ち的にはどれもめんどくさいから、性格変えるのダルいんだけどね」
「ダメじゃん」
いいながら小さく笑ったら、ハッキリとしたツッコミが入った。
ずっと同じ空返事みたいな声しか返ってこなかったから、やっぱ聞いてないかって思ったのに。
「……聞いてたの」
「聞いてるよ。俺はいつも」
ゲーム機を持つ手元に視線を向けたまま、ふつうに会話してくる。
「じゃぁさぁ、亮は?」
「性格変える人の順位?」
「うん」
「俺は、仕事。それ以外は全部一緒だね」
「え?全部同じなの?」
「うん」
「ほんとに?」
「ちょっとしつこいよ」
ずっと無表情だった亮が、ニヤっと口角をちょっとだけあげた。
僕も、笑って返す。
「やっぱ仕事で一番性格が変わる人が多いんだね」
「とくに俺たちはね。ゼルトを筆頭に」
「…そうだね」
Cは確かに仕事で変化がある。
普段から性格は変わるけど、変わることが多いのはやっぱり仕事の時だった。
僕とCは同じ仕事をしている。
だけど、そこに大きな違いがあるように思えるのはどうしてなのかな。