c-wolf
「なっ?怖い話だろ?」

「っとに、腸を引きずりだして見せ物にした挙げ句、ソイツは刻まれてるんだぜ?」

「まるで人間が野菜状じゃねぇか」

「そうっすねぇ……、でも、なんで腸をその刀にかけないといけないんだろうな。しかも、その極悪非道人が持っていた刀に」

青年の質問に、確かに、と男たちは首を傾げた。

「それに、何で腸をかけるだけじゃなくて、それが誰なのか分からないくらいに殺す必要があるんだろうな。もし腸を刀にかけるだけだったら、腸だけ引きずりだしたらいいじゃん」

ふむ……、と男たちはついに黙ってしまった。

「しかもまだ疑問はある。何で腸を刀にかける必要があるの?c-wolfって書いただけで、誰もが恐怖すると思うんだけど。逆を言えば、何で刀に腸をかけるだけじゃなく、c-wolfって書く必要があったんだろ」

とうとう分からなくなったのか、男たちはうぎゃぁー!と大袈裟に叫んだ。

「俺はもうわかんねぇ!!」

「俺もだ!!やけ酒だやけ酒ぇ!!」

「おう!おっさん、一樽ビールくれぇ!」

「はいよ……。あんたら飲み過ぎには注意だぜ?」

「そうそう。おっさんの言うとおり、あんまり飲むと肝硬変になっぞ」

青年はお勘定を出した後、その居酒屋からでた。

そして、道を歩いているうちに人気がなくなり、その瞬間、ゆらり、と影のように青年の隣に背の高い細身の男がたった。

「……」

「つまんねぇ情報ばっかり。つーか、俺らが知ってる情報しかなかった?みたいな?」

アッハッハ!と青年は高笑いした。

「威濡(いぬ)」

背の高い男が青年に静かな声で名を呼ぶと、威濡は笑い声をピタリと止めた。

「質問の答えはかえって来なかったよ。だから殺してもいない。安心しな、琥露(ころう)」

その返事を聞いて、琥露と呼ばれた背の高い男は、うなずいた。

「あんなところで殺しをされてはPOLだといっても信じてくれまいぞ」

威濡は小さく舌打ちした。

「琥露。うるさい。官長に注意されてから少しは俺だって変わってるよ」

「それでも、少しであろう?」

「……」

威濡は小さくまた舌打ちをした。



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