c-wolf
「僕が悪い子だったから?能なしだったから?なにもできないから?だから捨てたの?」

ギリギリと音がしてきた。

ふつうの人間ならば泡を吹いて気絶しているはずなのにc-wolfは悠然としてジッと伽羅を見つめている。

そしてようやく手を動かした。

「離せ」

そう言っても伽羅は手を離さない。

それどころか余計に力を込めてきた。

自分が跨っている者がc-wolfと気づいていないのか伽羅の眼はどこか遠くを見ていた。

「ねぇ……どうなの?威濡」

伽羅の口から出る伽羅がもっとも憎む男の名前。

伽羅の後ろに立って傍観していたシューツが笑った。

しかし、その瞬間c-wolfの手が素早く伸びて伽羅の首を掴んだ。

ギリギリと音がする。

首にc-wolfの指が食い込む。

伽羅はc-wolfの首から両手を離して自分の首に食い込んでいる指をどうにかしようと両手を指にガリガリとあてた。
首もとを押さえて苦しげにしている伽羅がc-wolfを見下げるとc-wolfは鋭く冷めた瞳でこちらを見上げていた。

「っ!!」

その表情に息が詰まり、一気に頭が覚めた。

その顔をみてc-wolfはゆっくりと手を離した。

一気に酸素が入ってきたため、伽羅はせき込んだ。

シューツは唖然としてc-wolfをみた。

燃えるような表情から一切の表情が欠落した。

まるで、人形のような無表情。

そのことにシューツは恐怖を覚えた。

「いいか、伽羅。威濡だけはやらねぇ。威濡は俺の獲物だ。ボスの獲物を横取りしたらどうなるか、お前が一番知ってるだろ」

伽羅は薄れていく景色の中で改めてc-wolfの強さを感じ取った。
< 73 / 85 >

この作品をシェア

pagetop