c-wolf
コンコンッと軽くノックしてから、威濡は中からの返事を聞く前にガチャッと扉をあけた。


「うぃーっす。帰ったぞー」


威濡が不躾に入ったのにもかまわず、官長であるレインは小さく微笑んだ。


「おかえりなさい、威濡。どうだった?」


「どうもこうもねぇよ。何の手がかりもつかめねぇ。ほんっとc-wolfはえらく頭いい奴だな……。俺ら”国の最高監視官であるPOL ”でもお手上げだぜ」


レインはクスリ、と笑った。


「それで?どうだったの?」


「どうって?」


「あの町だよ。ごめんね、わざわざあんな貧乏町に行かせて」


威濡は微かに眉をひそめたが首を傾げた。


「別に、そこまで貧乏でもなかったし、俺が入った居酒屋のジュースもいけてたし、おっさんたちは親切だったぜ?」


レインが威濡の言葉に微笑んだ。


「そっか。それで、その人たちはなんて?」


「別に何も。俺たちが知っている情報しか知らなかったよ」


レインがその言葉を聞いて首を横に振った。


「違うよ、威濡。僕はその人たちが何を言ったのかなんてわかりきっている。僕が聞きたいのは、その人たちが、君のことを何て言ったのかが知りたいんだ」


威濡は顔をしかめた。


「俺のことぉ?んなの覚えてねぇよ」


そっか、とレインはつぶやき、後ろに立っていた琥露をみた。


琥露はうなずくと、素直に言った。
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