LOST ANGEL

兄貴が呼び寄せた場所は大学の近くだったので、いつも通学するルートで簡単にたどり着くことが出来た。

自転車に乗って、駅まで向かい、駅の駐輪場に自転車を置く、そこからは電車ではなくバスを使う。

数十分バスに揺られて、大学から一番近い停留所で下り、徒歩で15分ほどの個人的には以外と楽な通学路だ。

高校の頃は満員電車で片道3時
間、しかも乗り換えも3回の通学をしていたから大学までの道程は天国だ。

なにより都会なのに緑が多く、高い建物や人が少ない環境がとても落ち着く。

兄貴に免許証を届けた帰り、散歩がてら大学内の図書館へ向かうことにした。

毎日家でゴロゴロとしているのもいいが、たまには身体を動かしておかないと、気持ちまでたるんできそうになる。

穏やかな街並みを深呼吸しながら歩く。

久々の空の下。

スニーカーの音が弾んで聞こえ
る。

すれ違う猫も可愛く見えた。

住宅街を通り抜ける。

毎日、毎日歩いた歩道。

見慣れた景色。

あるT字路にさしかかる…。


キーン…


急に頭痛に襲われた。

いつも目覚めと共にやってくる、あの頭痛だ。

オレは額を押さえ、歩道にしゃがみ込んだ。
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