LOST ANGEL

「信じるって約束して」

杏奈という少女の目は必死だっ
た。

「嘘じゃないことなの。マジなことなの」

「分かったよ。だから何?」

面倒になってきたので流すように頷いた。

「信じるって言って」

「信じるよ」

受け流していたことに気付いたのか、彼女の目がオレを睨む。

ゾクッとした。

「信じてね」

「…信じるよ」

ゴクっと唾を飲む。


「わたし、幽霊なの」


「……」

信じられなかった。

「なんだよそれ」

からかわれたことが頭に来て、直ぐに方向転換。

投げやりな言葉を吐いて、来た道を戻った。

バカバカしい。

少しでも可愛いなんて思って、心配なんかして…オレもバカだ。

ついてくる足音はしない。

「信じられるかっつーの」

独り言をボソッと呟く。

「信じるって言ったじゃん!」

真後で爆音がした。

驚いて振り返ると、杏奈がすぐ側で仁王立ちをしていた。

いっ…いつの間に?

「これだから人間なんて信じられないんだよ」

大きな目から放たれる鬼のように鋭い視線がオレを突き刺す。

「あんたも、わたしのこと頭オカシイとか、バカみたいって思ったんでしょ!」

図星である。

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