LOST ANGEL

「だっ…だって幽霊なんてあり得ないだろ…」

腰が引けてしまう自分が情けなかった。

「わたしだって、あり得ないと思ってたよ!」

「叫ぶのやめろって…」

「あんたが信じないからじゃな
い」

「幽霊信じろって言われたって、オレ霊感強いわけじゃないし、何の証拠もないんじゃ仕方ないだ
ろ」

「証拠?」

彼女は不思議そうに首を傾げる。

「君が幽霊である証拠だよ」

「深沢慧斗、あんたからわたしは幽霊っぽく見えないの?」

呼び捨てかよ…。

「全く幽霊になんか見えないよ。透けてないし、足もあるし、キャンキャンした声も普通に聞こえ
る」

「そうなんだ…」

「そうだよ」

「でもね…」

彼女はまた考え込んでいた。

「でも…。あなたが初めてなの」

「はっ?」

「わたし3日前からここにいる
の。色んな人に声かけたの…スゴく真剣に」

「3日前から…?」

「だけど誰もわたしに気付いてくれなかった」

オレの質問に答えてはくれなかった。

「だから…あなたが初めてなの」

「3日間、ここにいたの?」

もう一度聞いてみる。

「うん。どこへ行けばいいか分からなくて…誰も見つけてくれなくて…寂しかった…」

鋭かった視線が消え、切ない表情に変わっていくのがハッキリ分かった。

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