LOST ANGEL
バッグから取り出したのはスマートフォンだった。
杏奈はそれをオレの顔の前に近付けてくる。
「通話は忙しいから無理らしいけど、メールなら出来るらしいの」
「誰と?」
「だから、神様と!」
「………マジ?」
小声で尋ねる。
「超マジ!」
「マジか〜!!あの世でもスマホ時代かよ!?オレまだ二つ折りだぞ!」
「驚くとこ違うでしょ!」
そうだよ、バカかオレは…。
あの世のスマホに感動してどうする!
「かっ…神様からメール来たりするの?」
「個人的にはまだ来てないけど、メルマガみたいなのは届いたよ」
カルチャーショックが多すぎるので、今まで思い描いていたあの世は忘れるしかないと無理矢理自分に言い聞かせることにした。
「嘘だと思ってる?」
反応のないオレに対して、杏奈は口を尖らせている。
「思ってないよ。…あの世のイメージが崩れて、ちょっとショックだっただけ」
「…そーだよね。わたしも驚いたもん」
杏奈はそっとソファーに座りなおし、どこか遠くを見ているようだった。
そりゃ、そうだ。
あの世に実際に行った人間が一番驚いて腰を抜かしたに違いない。
想像を絶する世界だ。