LOST ANGEL
2 イツワリノソラ

いい香がする…。

女性ものの香水のフワッとしたところが鼻をくすぐる。

久々に外出した身体は心地よい疲れを感じ、柔らかなソファーに包まれて、とても気持ちがいい。


あれ……?

オレ、寝てたのか?


ゆっくり目蓋を上げる。

外は暗くなっていた。

「…やべっ」

慌てて飛び起きる。

兄貴の作った女子受け抜群空間に癒されて、いつの間にか寝入ってしまったらしい。

乙女かオレは…

自分が情けなくなって髪をかきあげるように片手で頭を抱えた。

「あ……」

思わずもれる声。


本物の乙女が目の前で眠ってい
た。

夢じゃなかったんだ…

長ソファーの上で横になって眠っている。

幽霊も眠るのかと疑問を抱きながら、少しの間その可愛らしい光景を見つめていた。

「おい」

声をかける。

「お〜い」

反応はない。

「おいっ…」

手で肩に触れようとしたが、指は彼女を貫いてヒヤっとし感触を残したままソファーに行きついた。

そっか、ダメだったんだっけ。

「おぉ〜い!」

耳元で大きく叫ぶ。

が、起きる気配はなかった。

「…っ、あ、杏奈…ちゃん?」

女の子の名前を呼ぶだけでドキドキしてしまう。

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