LOST ANGEL

しかも相手は幽霊なのに。

まともに女性と付き合ったことがないのも、こんな女々しい性格のせいなんだろう。

こんなとき、チャラい兄貴が誇らしく思える。

「…う…んん…」

杏奈が目を擦った。

猫のような愛くるしい仕草につい見とれてしまう。

「あっ、あん…」


ガチャガチャ

玄関の方から音がした。


バタン…


もしかして、帰ってきた?


「おう慧斗、昼間は悪かったな」

「兄貴…」

「なんだよ、その顔?お前までオレに惚れちまったか?」

「ちっ、違うよ」

「そんなマジに返事するなよ」

クスクスっと笑いながら兄貴はジャケットを杏奈のいるソファーに投げ捨てた。

やっぱり、兄貴にも見えてないのか。

兄弟だから、もしかしたらと可能性に期待していたが、あっけなく裏切られた。

「帰ってきたの?」

「いや、着替え取りに来ただけ」

と言って、兄貴が座ったのは杏奈の上だった。

「あっ……」

言葉を失う。

「ん?」

杏奈は眠ったままだった。

「あっ兄貴、ケツ冷たくない?」

「ケツ?」

「その…、今座ってるところ」

「……別に」

想定外の返事だった。

「そう…」

笑うしかない光景だった。

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