LOST ANGEL
「あのさ、兄貴」
「…どした?何かあったか?」
いかにもホストです!という顔が地味なオレの顔を覗き込む。
「…幽霊って信じる?」
「幽霊?」
「信じる?」
「オレが?」
ゴクンと唾を飲み頷いた。
「そんなもん信じるわけねーだ
ろ」
笑いながら立ち上がる兄貴。
「オレはそーゆー非科学的なことは信じない」
その背後で寝ている杏奈。
「見えても?」
「見間違いとしか思わないよ…」
理系の人間らしい答えだった。
「そんなことより、お前も家にばっか居ないで気分転換に外で遊んだらどうだ」
「…うん」
「まだ7時か。遊ぶのには早すぎるな」
そう言い残して兄貴は自室へ入って行ったが、数分もしない間に出てくると、洗濯機に服を押し込
み、髪をセットして「じゃ〜な」といつも通りに部屋を出て行っ
た。
オレにしてみれば19時は「もう7時」なんだけど…。
「マジチャラいわね」
目をぱっちり開けた杏奈が身体を起した。
「まぁ、あんたよりマシか…」
「っ…起きてたの?」
つーか、マシってどういうことだよ。
「あんなバカでかい声で起こされたの久々よ」
「えっ、あの時に起きてたのか
よ」