LOST ANGEL

「小学校では貧乏っていじめられて、中学では生意気ってシカトされて、高校は一番マシだったか
な。友達とか面倒で、染まらないようにしてたから」

それって…

「悲しくなかったの?」

ひとりでいることをあんなに嫌がっていたのに。

「どうだろ?…分かんない」

オレには何となく分かった。

ひとりでも強く生きていこうとしてる杏奈の姿が思い浮かんだ。

親や友達、そんなものなくても、ひとりでも大丈夫だと彼女は自分に言い聞かせていたんじゃないのか。

杏奈が成仏出来ない理由もそれらに関係があるのかもしれない。



「杏奈」

「なに?」

「会いに行こう」

行動してみなければ始まらない。

「誰に?」

「まずは、…母親かな」

杏奈の目が鋭くオレを睨む。

「余計なお世話だ」、そう語っている。

「話すんじゃなかった」

杏奈は立ち上がり、オレに背を向けて歩きだす。

オレはそんな彼女を追いかけ、肩を掴もうしたが、それはやはり空振りしてしまう。

そう、杏奈に届くものはひとつしかないのだ。

「逃げるのかよ!」

ただひとつ、声だけが彼女をつなぎとめられる。

杏奈は足を止めた。

「探そう」

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