LOST ANGEL
そして車はあっという間にアパートを後にした。
呆然と立ち尽くすオレ。
「ああいう女なんだよ」
いつの間にか杏奈が隣にいた。
「娘が死んで2週間しか経ってないのに、あんな風に男と出歩けるんだよ」
杏奈の言葉には何の感情も感じられなかった。
悲しいでも、寂しいでも、悔しいでもない無の感情。
「引っ越しの準備でもしてるんじゃない」
「引っ越し?」
「邪魔者が消えたんだから自由に暮らせるでしょ」
今、何を言っても杏奈には響かないだろう。
慰めの言葉なんて、きっと意味はない。
「わたしの骨って、ここにあるのかな?」
アパートの部屋を見つめる杏奈。
「墓なんて立てる金もないだろうし。いつかは無縁仏になるんだろうね」
「……」
「で、どうするの?」
「えっ?」
「成仏する方法考えてくれてるんじゃないの?」
「あっ…ああ」
地元に来れば何か手がかりになるものを探せると思ってた。
でも、イキナリ失敗って感じで、どうしたらいいか悩むところである。
「地元に来ればなんとかなるって思ってたの?」
辛口杏奈に図星をつかれ、冷たい汗が流れる。
「ほっ…他の手段も考えてある
よ」
「どうするの?」