LOST ANGEL
「そうだよ。牛丼屋のホールスタッフ」
「ホールか…まさに営業スマイルだな」
「空いてる時間はほとんど働いてた。貧乏だからさ必死だった訳
よ」
「そっか…」
親のすねをかじって毎日ぼんやり生きてる自分が恥ずかしくなる。
「でも、そのバイトに行く途中で事故って死んじゃったんだけど
ね」
人生は人それぞれだ。
でも人生は平等ではない。
何故オレみたいな奴が生きてて、杏奈みたいな奴が死んでしまったんだ?
変わるって何だ?
オレが変わらないのは、楽に生きすぎてるからなのか?
そんなことを考えながらベッドから空を見上げる。
この空も本当は美しい空なのかもしれない。
都会の空に星が見えないのは、ライトのせいじゃない。
きっと都会の人間の瞳が汚れてしまったからなんだ。
汚れたのは空じゃない…。
オレたちの心だ。
昨夜は全く眠れなかったのに、久々に遠出をした身体はあっという間に睡魔に負けた。
隣にいる杏奈の冷気が、とても心地好かった。