LOST ANGEL
「だって、わたしバイトに行く途中に事故にあったんだよ!なにかありそうじゃん」
言われて見ればその通りだ…。
「そうだな。行ってみるか!」
ペダルを踏む力を強める。
「うん」
そして、また急に杏奈は静かになった。
オレはつくづく鈍感な奴だった…
神様はどうしてオレを許してくれたんだろう…
「え、ここで下りるの?」
「そうだよ」
オレたちがバスから下りた場所。
それは間違いなく大学の通学路である停留所だった。
そう、まさにそこは2人が初めて出会った場所にほど近いバス停。
「…バイト先って、この近くなのか?」
「そうだよ」
そう言って杏奈は歩き出した。
「じゃあ、事故にあったのもこの辺?」
慌てて追い掛ける。
「この辺って、事故現場は慧斗と最初に会った場所じゃん」
…最初に会った場所?
「って、例のT字路の?!」
「あれ、わたし言ってなかったっけ?」
「聞いてない…」
でも、考えてみれば解りそうなことだった。
確かに杏奈は行くあてもなく、3日間あそこに居たと言っていたんだ。
「どうしたの慧斗?」
「いや、もっと早くそれに気付くべきだったと思って…」