LOST ANGEL
「それって、事故現場に行けば何かみつかるって思ったわけ?」
「そうだけど…」
杏奈がしかめっ面で顔を覗き込んできた。
「だったらとっくに何か見つかってるはずじゃん」
イラつきと呆れが混ざったような話し方に少し怖さを感じる。
「杏奈が3日間も現場にいて何もなかったのは良く解ってるよっ」
「でも、現場3回とか言うんでしょ」
食い気味で図星をつかれた…。
立ち止まる杏奈に何か話し掛けようと必死に言葉を探す。
「まあ、それも大事だとは思ってるよ…」
先に口を開いたのは杏奈だった。
「だろ!ほら…最初のときとは状況が変わっているかもしれない
し、杏奈も幽霊として成長してるし!」
自分がめちゃくちゃなことを言っているのが、自分でもよく分かった。
でも、そんなことしか考えられなかった。
杏奈はそんなオレを横目で冷ややかに見ている。
「…ごめん」
反射的にその言葉がついて出る。
嫌な空気に飲み込まれてしまいそうだった。
「謝らないでいいよ…。わたしが臆病なだけだから」
「…臆病?」
「本当は怖いんだよ」
オレはつばを飲み込んだ。
「自分が死んだ場所に行くってこと…」