LOST ANGEL
やっぱりオレはバカだ。
「突然意識を失っただけだから、何かが怖いってわけじゃない
の…」
そうだよな…。
自分が死んだ場所なんて行きたくないに決まってるのに…。
「だけど…」
「帰ろう!」
杏奈の気持ちに気付いてやれないのに、何かを見つけられるわけがない。
「…いいの?」
「杏奈が嫌なら、無理に行く方が間違ってる」
「ここまで来たのに?」
「…だって、怖いだろ」
ただ杏奈の言葉を繰り返す。
親族だって現場に足を運ぶのを嫌がるのに、本人が嫌じゃないはずがないんだ…。
「…ありがとう」
杏奈は下を向いて少し笑った。
「じゃあ、反対側のバス停に…」
「行ってみよう!」
杏奈は止めていた足を前に出す。
「えっ?」
オレがポカンとしてる間に、杏奈はスタスタを事故現場方面に歩いていく。
「あっ、杏奈?」
呼び掛けながら追い掛ける。
「ど…どうして?」
「なんか、大丈夫な気がする」
「なにが?」
「慧斗と一緒なら怖くないって思ったの」
言ってることも、やってることも無茶苦茶矛盾してる杏奈。
「無理すんなよ…」
でも彼女の笑顔ひとつで全て許せてしまう。