LOST ANGEL
「杏奈って、変り者だよな」
「慧斗よりはマシじゃない?」
「オレのどこが?」
「簡単に幽霊信じちゃうとこと
か、その幽霊を助けようと思うとことか。わたしだったら有り得な〜い」
こんな憎まれ口叩かれてるのに、何故か憎めない。
むしろ愛おしくなってくる…。
そして、ゆっくり無言のまま、事故現場となったT字路の前までやってきた。
杏奈は数歩後ろに下がって現場を眺めていた。
「わたし…ここで死んだんだね」
初めて会った場所。
でも、杏奈はあの時の顔と全く別の表情を浮かべている。
きっとあの時は自分を見つけてくれる人間を探すのに必死だったのだろう。
よく見ると、事故の傷跡が生々しく残っている。
欠けたコンクリートの壁。
道路のタイヤ痕。
曲がったままのミラー。
道路と歩道に残った細かいガラスの欠片が、太陽の光を受けてキラキラと輝いている。
『神様と面接するまで2週間も待たされたんだよ』
約2週間前、確かにここで事故は起こったんだ。
でも……
何かが足りない…
なんだろう?
大事なものを見落としてる気がする…
ここは…
「うっ…」