LOST ANGEL

「慧斗!!」

オレは両膝を地面についた。

久々にあの激しい頭痛が襲ってきたのだ。

ここ数日、全くなかった頭痛は前より少し痛みを増している。

「慧斗!頭痛?!」

杏奈がそばにくると少し痛みが和らぐ。

「ああ…」

「どうしよう…わたし、救急車呼べない…」

震える杏奈の声。

「大丈夫、薬…持ってるから…」

「だったら、ここから離れよう。歩ける?」

「うん」

本来なら、杏奈にしがみつきたかった。

でも、それは出来ない。

オレは壁をつたって立ち上がる
と、現場に背を向け、そっと前に足を出した。


「あっ…」

「どうしたの?」

「治った」

「えっ?」

「頭痛がなくなった…」


不思議だった。

現場から目を逸らした瞬間、あの激しい痛みがすっと消えたのだ。

「もう、痛くないの?」

「…うん」

「でも薬飲んだ方がいいよ。向こうのファミレスに行こう」

「そっ…そうだな」

オレは怖くて後ろを振り返ることが出来なかった。

「杏奈…」

「なに?」

「寄り添っていい?」

「……いいよ…」

杏奈の側にいると気持ちが安ら
ぐ。

彼女に触れられたら…。

彼女を抱きしめられたら…。

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