LOST ANGEL

知らないというより、兄貴に貢ぐ女は沢山居すぎて把握できない。

あんな女ったらしの男のどこがいいのか理解に苦しむ。

顔か?

だったらオレだって、そんなに負けてない!

幼い頃から、容姿は似ているといわれてきた。

黒目がでかくてまつ毛が長いとことか、鼻筋が通っているとこと
か、口がビーバーに似ているとこも、身長や体型だってあまり変わらない。

って…、何考えてんだ?

自分がナルシストに思えて急に恥ずかしくなった。

そんなこんなで兄貴が帰宅しないことは日常茶飯事なのだ。

マンションの8階から見える光景は普通かと思いきや、以外と良い眺めだった。

近所の公園の夏らしい緑色、その向こうに流れる川が共に日差しを浴びてキラキラ輝いて見える。

ベランダに出て、兄貴が女を呼んだときに利用するリゾート気分のガーデンチェアに腰掛けた。

Tシャツに短パン、手には昨日コンビニで買った菓子パンとアンバランスな装いでの朝食。

いや、ブランチといったほうが正しいだろうか?

風がそよそよと気持ちいい。

都会なのに新緑の香りも漂ってくる。

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