LOST ANGEL

「あるけど?」

「それだけじゃない…」

「他になにか?」

杏奈はどこか恥ずかしそうに身体を揺さ振らせていた。

「わたし…まだ、成仏したくないんだ…」

ドキッっと胸で何かが弾けた。

「まだ…この世に居たいってこ
と?」

オレの側に…?

「うん」

杏奈が潤んだ瞳でオレの目を見てくる。

きゅっと胸が苦しくなる。

心地好い鼓動。

この感じ、久しぶりだ。


「あのね」

「うん…」

「花火大会、行きたいんだ!」

……………。

「えっ?」

「ほら、地元の花火大会!」

「…うん…そりゃ解ってる…」

「次の日曜でしょ。だから見に行きたくて!」

杏奈は満面の笑みを浮かべて語
る。

「まだ成仏したくないのは花火見たいからか…?」

「うん。恥ずかしくて言えなかったけど…」

なんだったんだ、オレの胸の高鳴りは…。

「それに、見たかった花火見れたら後悔なく成仏できるかもしれないし、一石二鳥じゃん!」


頭より心の方が病んできた。

まあ、幽霊に恋なんて有り得ないからいいんだけど。

…いいんだよな?

いや、いいのか?


「でも…慧斗、あまり外出ない方がいいのかな?」

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