LOST ANGEL

「何で?」

「何でって、さっきみたいに疲れて具合悪くなったら困るでしょ」

「困らないから!」

オレはテーブルをドンっと叩いて立ち上がってしまった。

店員が不審者な目でオレを見ていたので、とりあえずそっと座りなおす。

「オレが連れていく」

「でも…」

「絶対にオレが連れていくから」


もしも杏奈が帰ってこなかったら

もしも本当に成仏してしまったら


もう会えない…。

その時オレは何故か泣きたくなった。

杏奈を成仏させるために頑張っていたのに…。

何でこんな複雑な気持ちになるんだ?



オレは杏奈に恋したのか?




「おかえり〜」

玄関を開けると兄貴の声が返ってきた。

「居たの?めずらしいね」

「お前こそ最近良く出掛けてて、めずらしいじゃんか」

「そうだね…」

杏奈は見えていないにも関わら
ず、オレの後ろに隠れている。

まさに背後霊だ。

「頭痛の方、どうだ?」

ソファーに座り、タバコを口にくわえながら尋ねてくる兄貴。

「最近はほとんど無かったんだけど、さっきちょっと…」

「ちょっと?」

「すぐに治ったよ」

「そっか…」

あっ…!

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