LOST ANGEL

「本日も晴天か…」

空に向かって呟いた。

そんな風に和んでいるとき、部屋の中から携帯の着信音が大音量で流れはじめた。

一瞬ビクっとする。

慌て部屋の中へ戻り、チカチカと点滅している携帯を握る。

噂をすれば…の兄貴からだった。

「もひもひ」

「はっ?」と、言われたので、急いでパンを飲み込んだ。

『何やってんだ慧斗…』

「いや、今飯食ってたから」

『そうか』

他に言うことなんてない。

「何か用事?」

『ああ』

用事がなければ電話をかけてくる人間でもない。

「届けもの?」

それがオレの兄貴、深沢和斗だ。

『そう。そこに免許証ないか?』

「免許証?」

『多分リビングの印鑑とか入ってる引き出し』

ごちゃごちゃ汚い引き出しから免許証を発見した。

「あったけど。届ければいい
の?」

『頼む』

「免許証が必要なんて、また本人確認?」

『ビンゴ!するどいね慧斗くん』

「どうせ女絡みだろ?」

『…まあね』

こうしてオレは兄貴の指定した場所まで免許証を届けるはめになった。


このときはまだ知らなかった…
この外出が自分の運命を変えることになるなんて…


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