“愛してる”の、その先に。
「どうして?大学からの付き合いだったんでしょ?
うまくいかなかったの?」
「まぁ…お互い社会人になって忙しくなったというか…
段々会う時間も少なくなって、それで…」
「すれ違い?それで気持ちが冷めた」
「まぁ、そんなもんです」
ジョッキを口に運ぶと、村井は唇だけ湿らせて離した。
「…ついてないわね、村井も。
うちの支社じゃ女なんて私くらいだし。
芝さん辺りに、飲み会セッティングしてもらったら?」
芝晴樹は30代独身のうちの営業マンで、
結婚もせず月3回は合コンへと繰り出す男だ。
仕事は出来るが、
週明けにはいつも合コンで持ち帰った女の子が、どんなお尻をしていたかを大きな声で同僚に話している。
おそらく彼自身、まだ結婚する気はなさそうだ。
「いいんです。しばらく、そういうのは。
俺も仕事、まだまだだし。
一人前の社会人だって胸張って言えるようになるまでは、恋愛なんてする資格なんてないです」
「ぶっ」
私は思わず吹き出した。
「村井、あんたって面白いわね。
今時の子ってそんな真面目なの?
その爪の垢、煎じて芝さんに飲ませてやりたいくらいだわ。
若いんだから、もっと手当たり次第遊べばいいのよ。
結婚したら、そんなこと許されなくなるんだから」
私は可笑しくてケラケラと笑った。
真面目で純粋なやつだと思ってはいたけれど、
まさかこれほどだとは思っていなかった。
そりゃ手も出してこないわけだ。