“愛してる”の、その先に。
「……でも……」
村井がうつむきがちに、言葉を濁しながら続ける。
「…でも、ショックだったくせに、
その時の早川さんの泣き顔が、すげー綺麗で色っぽくて……
俺…それ見た途端、
で、出ちゃって……」
「へ…?」
村井が恥ずかしそうに、顔を真っ赤にした。
私は目をパチクリさせて村井の顔を見た。
「早川さんが吐いたって、嘘なんです。
俺が自分で自分の下着汚したから、風呂場で洗ってて…
出たとこで早川さん起きちゃって……」
「ははっあはははははっ」
我慢出来なくなって、私はお腹を抱えて笑った。
「で、出たって…村井、
あんた何言い出すかと思ったら…
あはは、おかしい〜」
その時の村井の姿を想像したら、
最低というよりおかしくて仕方なかった。
「そんなの、全然可愛いもんじゃない。
なんだ、私てっきり村井は草食系だから、あんまりムラムラしたりしないのかと思ってた」
「そっ、そんなことありませんよ!
俺だって普通の年頃の男ですよ?
好きな女の裸を想像してオナニーだってするし、
好きな女を前にしたら、抱きたいと思うのが普通じゃないですか」
そう言って村井は、まっすぐに私を見つめてきた。
「……村井、もしかして私のこと好きなの?」
「好きですよ!
好きに決まってるじゃないですか!
なんなんですか、今までのは!」
「え、だって……」
親子くらい歳の離れた上司と不倫して、
気持ちのないセックスばかり繰り返して…
終いには不倫相手の奥さんに殺されそうになって、
そんな私の、どこが綺麗で好きだと言っているのだろう。
そう思ったけど、村井のまっすぐで真剣な眼差しに鼓動が早くなった。