“愛してる”の、その先に。
「…生意気なことばっか言って。
やっぱ若いわね、村井は」
私はクスリと笑って言った。
「そうですよね…。
俺なんかにどうこう言われたく……」
「ううん、そういうことじゃなくて」
私はそっと、村井の頬に触れた。
「ねぇ、どうしたらそんなまっすぐに好きだって言えるの?
怖くないの?
もし私が拒んだらって考えたら嫌じゃないの?」
「…そりゃ怖いですよ。
でも、抑えられるものでもないんです、こういうのって。
…好きです。
俺、早川さんのことすげー好きなんです」
村井が私の身体を抱き寄せて、耳元でそう言った。
……不思議。
抱きしめられて、好きだと言われるのなんて初めてじゃないのに、
こんなにも心が穏やかになるのは、生まれて初めて。
「…“すげー好き”で、それで?」
「え?」
「その先には何があるの?」
私はちょっと意地悪に聞いてみた。
「…そ、その先にはまだ何もありません」
「え?」
「何もないんです。
何もないから、自由に描いていくんです。
だ、だから…その先の未来を、
ふ、2人で描いてみませんか」
語尾が震えて、私はまた吹き出した。
「やだ、なにそれ。
なんかプロポーズみたい」
「そのつもりです。
もしくは、“結婚を前提にした交際の申込”のつもりです」
「あははははっ」
「だから何でそんな笑うんですか!
俺、真面目に言ってんのに」
村井がたまらず身体を離して、私の顔を覗き込んだ。
「ごめんごめん…だって…」
私が笑って謝ると、村井が唇を重ねてくる。
触れただけの唇が離れると、村井の顔が目の前で止まった。
「…わからないなら、分からせてあげます。
俺が、早川さんのことどう思ってるか」
「きゃ…」