“愛してる”の、その先に。


“安心しなさいよ。


あんたを襲ったりはしないから…”




そんな言葉が出かけた。


だけど私は必死で飲み込む。


冗談でも、否定的でも、そんな話題にはしたくない。


私たちがただの“男女”であることを、彼に意識させたくなかった。



ガラス張りの浴室で、シャワーを浴びる。



…考えてみたら、ラブホテルなんていつ以来だろう。


“あの人”は、そういう場所を嫌っていた。


いつも綺麗なシティホテルのダブルを取って、



私を呼び出す。



あまりにも普通で綺麗な部屋だから、

今からそこで繰り広げられることが、なんだかやましく感じるくらいだった。

私はいつも、罪悪感に襲われていた。



…場所のせいではない。



私自身が、していることだ。








「ふー、さっぱりした」


シャワーを浴びたら、酔いもほとんど冷めてしまった。

もともと、酒がすぐに身体から抜ける体質なのだ。


吐くまで飲んだのは久々だけど…。



部屋に戻ると、村井がソファで横になっていた。

それなりに長身だから、窮屈そうに身体を丸めて縮こまっている。


そっと覗きこむと、子どものような寝顔で小さく寝息を立てていた。






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