“愛してる”の、その先に。



男女がひとつの部屋で夜を明かしたというのに、何もないこともあるんだ。




…なかったらなかったで、ちょっと複雑。


こんなホテルに泊まったのだから、

力尽くでも押し倒せば良かったのに。



私は所詮女だから、

男のあんたの力には、どうしたって敵わない。


私も酔ってたし、村井にはいっぱい迷惑かけたんだし、

それくらいの見返りを求めるのが普通じゃない?


私が村井の立場だったら、きっとそうする。





別にあんたから来たって私は……






「……って、何考えてんだか」



ふと可笑しくなって、私はひとり笑った。


結局、私も“あの人”と同じなのかもしれない。


男と女にプラトニックな関係などありえない。


そこに存在するのは、


堕ちるような快楽と、


それを“愛”だと信じこもうとする浅はかな想い。


いけないと言われれば言われるほど、


だめだ思えば思うほど…


その気持ちは昂ぶってゆく。


快楽が増してゆく。


そんな矛盾こそが、真実の愛だと信じ込む。






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