“愛してる”の、その先に。


男と女には“それ”以外ありえないと、


そうであることが普通だと、


私もいつのまにか、そう思うようになってしまった。




「…お腹空いた。帰ろ」






お腹が空けば、ご飯を食べる。


眠たくなったら、ベッドで眠る。


セックスしたくなったら、私はする。





…それって自然なことでしょう?



そこに“愛”とか“恋”とか、そんなあやふやなものなどなくたって、




人はきっと欲しくなる。



そんなことを考えながら、私はひとりラブホテルを後にした。







ーーーーーーー…







月曜日。


いつもと変わらぬ休み明け。



誰よりも早く出社して、オフィスの電気を付ける。


窓を開け空気を入れかえて、


観葉植物に水をやる。


社員一人一人の、デスクの上を拭く。




小さな文具メーカー。


短大を卒業後ここに入社して、もう8年目。


毎朝そうすることが、私の日課だった。







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