Perfume...
個室を出て、とりあえず外の空気を吸って落ち着こう。

店を出ると大きく深呼吸をした。


「あれ?偶然」


その声に振り向くと、資料室の企業スパイの男がいた。


「あなた……」

「大石チヒロさん、こんなところでどうしたの?」

「企業スパイこそどうしたのよ」

「あはは!ウケる。そろそろ名前呼んでよ」

「名前知らないもの、っていうより、どうして私の名前知ってるのよ!」

「ん?それは秘密にしておいたら教えてあげるけど」

「……何よ。てかいやよ!企業スパイの加担するとか!!」

「あはは!!明日、君は営業企画部配属になる」

「営業企画部?」

「明日、立ち上げの部署だけどね。僕が部長で君が室長」

「……え?」

「アルファ社、営業企画室から明日付で君たちの会社に移籍することになった月島ユウト。よろしく」

「アルファ社……営業企画室って……?!」


雑誌で見たことがある。

数々の営業戦略を作り出して、2年でアルファ社を世界規模にまで持ち上げた伝説の部署。


「で、今日は誰かと一緒?」

「……え、あ。……うん」


そうだった。

戻らなきゃ。


「もしかして、今日の彼?」

「……」

「あの男、早めに切りなよ?」

「ねぇ、あなた、浮気したことある」

「え?」


まっすぐ彼の目を見つめた。

ふんわりと香るのは、やっぱりリョウと同じ香り。

男は浮気をするものなの……?

彼、月島ユウトは優しく笑った。


「信じるか信じないかは君次第だけど、僕はないよ」


止めたはずの涙がまたあふれた。

この男の前で、二度も泣いてしまった。
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