Perfume...
月島ユウト。

彼の言っていることが本当なら、明日から私の上司。

差し出された右手に、懐かしさが蘇った。

リョウに出逢ったときに似た感覚だった。

ゆっくりと右手を差し出すと、ぎゅっと強く握られた。


「で、ここからはナンパ。彼と別れたあとは、僕の歓迎会ってことでどう?」

「……は?」

「そこらへんの安い居酒屋で」


思わず吹き出してしまった。

やっぱり彼はリョウにどこか似てる。

頭がよくて、優しくて、たくましくて、強くて。

そのくせ見栄っ張りじゃない。

とても庶民的な感覚を持っていたリョウに。


「ねぇ、あなたって何者?」

「ん?月島って者だけど?」

「だから、そうじゃなくて」

「敢えていうなら、下心がある男ってところじゃないか?」


高価な割烹料理より、その辺の居酒屋に行きたくなった瞬間だった。

男は知っているのかしら。

女にも、ある程度の下心はあるってこと。


「少しだけ待ってて?バッグを取ってくるから」

「了解」


煙草をくわえた彼の口元が、色っぽく笑った。


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