Perfume...
キスの記憶
歩いて少しの場所にある、最初に見えた居酒屋に行き当たりばったりで入ってカウンターに座った。


「何、飲む?」

「とりあえず生でしょ?」


ちょうど店員さんが来たので、月島ユウトの返事も聞かずに口直しの生ビールを2杯頼んだ。

二人で乾杯をして、なんとなく気になっていたことを尋ねた。


「ねぇ、あなたそういえば、誰かと何か予定があったんじゃないの?」

「いや、別にないけど、どうして?」

「だって、あのお店の前にいたから。一人で行くようなお店じゃないでしょ?」

「あー……、あれは、君の元カレの最後のあがきを盗み見しようかと思って」

「……え?」

「喫煙室で、同僚の男に『彼女に浮気がバレて、今日は昭八でおごる約束した。給料前で、財布に響く』と粋がっていたのを聞いたから」


よくある男のパターンだ。

浮気が男の甲斐性的に思っている男。

そして、それを許してくれる彼女がいるんだ、と自慢する男。


「それにしても、君とあの男のことは社内では内緒だったわけ?」


「別に無理に隠してたわけじゃないけど、いう必要もないし。ま、そのせいでイサムはやりたい放題だったってわけね、結果的に」

「へぇ……」


そうつぶやいて、月島ユウトは生ビールを一気に飲み干した。


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