Perfume...


「チーちゃん、俺、一足先に会社に行くよ。今日が一応初出勤みたいなものだから。昨日までは企業スパイだからね」


『チーちゃん』って呼んだ。

エッチなときは『チヒロ』

酔っぱらった時は『チーちゃん』

家族の前でも『チーちゃん』


「……ホントにここに住む気?」

「チーちゃんは反対?」


ずるい。


「……反対ってわけじゃないけど」

「ホントに?じゃあおじさん、おばさん!お言葉に甘えて今日からここに帰ります!!」


そう笑って、彼は米粒ひとつ残っていないお皿を重ねて片付けようとした。


「もちろん!あ、ユウくん、食器なそこに置いておいてね、それから今日の夜は何が食べたい?」

「ハンバーグ……」


何、ちょっとかわいい。

そして、そんな『かわいさ』は母を完全に虜にした。


「ハンバーグね!!わかったわ、おばさんとっておきのビッグハンバーグ作るからね!!」

「やった!楽しみにしてます」


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