Perfume...
なんか朝から疲れてぐったりしてしまった。

いつも通りの電車でいつも通り出社すると、イサムがものすごい勢いで駆け寄ってきた。


「チヒロ!どうしてケータイに出ないんだ!!」


ああ、完全に我を見失っている。

だって私たちのことは社内の誰にも言ってなかったのに。

それより今になって思い出した。

妹たちとイサムあのあとどうなったんだろう。

ま、どうでもいいけど。

当然、みんなが不思議そうに私たちに注目した。


「ごめん、ケータイバッグにしまったまま朝まで忘れてた。何か用だったかしら?」


とりあえず、当たり障りのない言葉を返したのに、イサムはもう完全にみんなにバレようが、どうしようがいいみたいだった。


「ちゃんと話をしよう」

「話をすることもないと思うけど。それより、みんながびっくりしてるわよ?」

「……別に、どうだっていい」


ああ、もうめんどうくさくって。

都合のいい、イサムにもうんざり。

こんな男でも私はちゃんと好きだった。

寂しかった心を埋めてくれた。

だから嫌いになりたくないのに。

イサムのネクタイを思いっきりひっぱって、身体をぐいっと引き寄せた。

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