Perfume...


「チ……」


そのまま濃厚なキスをしてやった。

みんなが注目してる。

このあとの言い訳は何にしよう。

とりあえず、この会社がお堅い年功序列的な会社じゃなくってよかった。

そうだとしたら、朝からフロアでキスとか、始末書騒ぎ。

でも、この行為は『公然わいせつ』なんかになったりしないよね?

いろいろ走馬灯のように頭の中をよぎって、キスを終えた。


「チヒロ……」


一番びっくりしているイサム。

そんなイサムに最後の言葉を贈った。


「私とイサムはお互いに好きあってた。そして、恋人同士だったわ。でもね、私、浮気をする男はムリなの。それも社内の女の子に手を出すとか、ありえないから。これが最後のキスよ。これ以上、イサムに失望させないで」

「チヒロ……」

「じゃ!私、営業企画部に異動になったから!じゃあね」


机の上を片付ける私に視線が集まっているのがわかる。

一気に片付けて、荷物を抱えようとすると、すっと横から手が伸びた。


「初めましてみなさん。今日から営業企画部に配属になった新人の月島ユウトです。よろしくお願いします。じゃ、大石さんはもらっていきます」


荷物を奪って、私の手を引いていく広い背中。

なんか……、心が緩む。

別に、辛いわけじゃないのに泣きそうになってしまった。

いつも彼は私を泣かせてばかりだ。

小さいころより意地悪だ。



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