Perfume...
肩にもたれかかったままの彼が優しい声で言った。


「チーちゃん……」

「何?」

「もう、アイツのこと忘れた?」

「……え?」

「資料室の男」


イサムのこと?

ホントだ……。

昨日の今日のことなのに、ずいぶん昔のことみたい。


「さぁね」

「ふーん……」


かっこつけてしまった。

本当は、不思議なくらい、すっかり私の中にいなくなったイサム。

そのまま彼の身体がズルリと滑り落ちて、私の太ももに彼の頭が横たわった。

なんだか不思議な気分。

とても愛おしくて、だけど男らしくて。

目を閉じたままの彼の頭をなんとなく撫で続けていると、彼は何も言わないまま目を閉じていた。

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