Perfume...
そんな話を聞いて、ふと思ったことがある。

彼は、どこにいたのだろう。


「そういえば……ユウくんって……お母さんとどこに引っ越したの?」


だって中学時代からの友達の青山さんも東京にいるってことは、もしかして東京だったとか?


「吉祥寺」


吉祥寺といえば、私たちの実家から二つ目の駅。

もっと遠くに行ってしまったのかと思っていたのに。


「ぇ!!ってことは私たちそんなに離れてなかったってこと?」

「そ。でも、俺、母さんに何度も聞いたんだ。『チーちゃんに会いたい、俺たちが引っ越し前住んでたのはどこ?』って。そしたら『長野県』って言われてたから……」


小さかった彼には、自分がどこに住んでいたかなんてわかっていなかったんだろう。

なんだか胸がキュンと苦しくなる。

青山さんが少し笑って続けた。


「中学の頃、二人で『チーちゃん探しの旅』とか言って一度長野県まで行ったよな。だけどなんの手がかりもなくて、結局帰ってきたけど」


さらりと彼は言ったけど、少し切ない顔をした。

胸がさらにぎゅっと締め付けられるような思いになった。

彼と離れた時は寂しかったけれど、うるさい大家族の中でなんとなく彼の存在が薄れていった私。

だけど彼は、お母さんと二人暮らしの知らない土地の中で、どんな風に寂しさを紛らしていたんだろう。

そんな風に私を探す旅までしてくれていたなんて……。


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