Perfume...
青山さんと別れて、タクシー乗り場までの道を二人で歩いていた。

当たり前に手をつながれてなんだか照れてしまう。

スーツ姿の彼と、スーツ姿の私。

手をつないで歩いている風景は、なんとなく不思議な感じに違いない。

街行く人がみんな振り返る。

きっと彼が、客観的に見てもイイ男だからだ。


「ねぇ……ユウくん注目浴びてるんだけど」

「俺じゃないよ。チーちゃんだよ」

「え?」

「スーツ姿のチーちゃんは最高にかっこいい。そんなイイ女が、こんなに堂々と男と手をつないで歩いてたらイヤでも注目浴びるって」

「それはない」

「できれば昼間の会社でやってみたいけどね」

「あのねぇ……」

「まぁ、しばらくは我慢する」


一緒の家に帰るのに、帰りたくない。

二人でいたいから……。

『もう少し一緒にいたい』なんて素直な言葉が出そうになってしまいそうになる。


「ねぇ……」

「チーちゃん、おじさんになんて言い訳しようか」

「……え?」

「女の子、こんな遅くまで連れまわして。……ヤベー……」


ブツブツ言っている彼の背中を見て、とても温かい気持ちになった。


「どこか泊まる?」


意地悪して聞いたら、彼の方がかなり上手だった。


「へぇ。チーちゃんその気になった?だったら、その前に声出さずにイク方法、覚えてもらおうか。大家族の中でも大丈夫なように。……チヒロ」


『チヒロ』と色っぽい声。

上手なキス。

……完全に、振り回されてる。

だけど、そういう恋も悪くない。


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