Perfume...
家に帰ると、マンガみたいにカーテン一枚で私の部屋が二つに仕切られていた。

『遅くまでチーちゃんを連れまわしてすみません!』と謝る彼に、『一応部屋は仕切っておいたぞ』と父が笑った。

この家族は、いったい私たちをどうしたいのだろう。

てか……、カーテンで仕切られた部屋とか、どんだけ無防備。

普通に気配を感じるし、カーテン普通に超えられるし。

それでも律儀にカーテンの向こうに横になった風の彼。


「チーちゃん、あのさ……」

「ん?」

「俺、……頑張るから」

「……え?」

「仕事」

「……ユウくん?」

「かっこよく決めたいところだけど、案外不安なんだ」


カーテンの下からそっと伸びてきた手を、ぎゅっと握った。

彼は前の会社で頂点をおそらく見たはず。

それでも、胸に不安を抱えていて、それを私に見せてくれる。

そんな彼が、強がって弱音を吐かない人よりもとても大人に見えた。


「ユウくん、大人になったね」

「はは。からかってるのか?」

「そうかも」


静かになった部屋で、彼が静かに言った。


「大家族とか……憧れてた」


カーテンでしきるしかないくらい人数が多くて部屋が満杯の我が家。

そんな家族がとても愛おしく思えた。
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