Perfume...
「とりあえずは企業スパイってことで」
そう笑って私の頭に手をおいた。
ふんわりと香る男物の香水。
ほのかに香る煙草の香り。
「……リョ……ウ」
「え?」
『喫煙室が遠いし、チヒロ見逃して?』
そう笑いながらこの部屋で1本だけ煙草を吸うのが日課だったリョウと同じ香りがした。
「あ……うう……ん」
「男?」
「そんなんじゃないわ」
言葉とは裏腹に、涙がこぼれた。
この場所で、この香りに触れるのはまずかった。
半年前に封印した涙が止まらない。
「ごめ……」
涙をぬぐおうとしたらそのままその男の広い胸に抱きしめられてしまった。
「ちょっと……離して」
「ここ密室だし、さっきのイサムみたいにこのままここでヤッちゃう?」
「あのねぇ……」
この男。
背中をぎゅっと引き寄せる大きな手が、とても温かいのがブラウス越しに伝わった。