Perfume...
割烹店の誘惑
オフィスに戻っても、さっきの男の香りが私にまとわりついているような気がしてならない。

リョウと同じ香りの男。

同僚に、さっきの資料室での出来事が見透かされそうで、少し恥ずかしくなった。

PCの前に座って仕事を始めようとしたらデスクに置きっぱなしだったケータイにメールが届いていた。

イサムから。

もうその時点で迷惑メールにしたい予感。


『今日会える?てか、会って!頼む』


無下に断って、イサムのフロアからここまで直接会いにこられても困るから一応返事した。


『別にいいけど』

『良かった!じゃあ、俺の部屋に来て』


何様?

会いたいなら、お前が会いに来い、ってメールを送ろうとしたけれどやめた。

こう見えて私、実家暮らし。

しかも今どき6人姉妹の一番上。

だからイサムを家に誘ったことなんてなかったことに今更気づいた。


『それはイヤ』

『二人でちゃんとゆっくり話がしたい』

『じゃあ、「昭八」で』

『了解。おごるから!』


必死……笑える。

割烹「昭八」

コース料理12500円。

5人の妹たちに一斉メールを送った。

『姉、不覚にもどうしようもない男と付き合っていた模様。本日別れます。割烹昭八に19時集合。露出多めの服で。ただし品のある店なので、そのあたり空気読むように』

頭のいい妹たちから『了解』メールを5通受け取って、仕事に集中した。

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