Perfume...
昭八についたのは10分前。

今日は絶対にここの料理が食べたかったから、さっさと自分の名前で予約をしていた。

『オオイシ』と告げると個室に案内してくれた。

父と母から、小さいころ教わったのは5分前行動の美学。

個室には同じ両親に育てられた妹5人がすでに勢ぞろいしていた。

5人の妹たちが背筋をぴんと伸ばして座っている。

指示通り露出の多い服だけど、上品に着こなしてる。

こういうところが、自慢の妹。


「それにしてもチヒロ姉が『どうしようもない男』と付き合うってめずらしいよね」

「ホント、ホント。チヒロ姉っていい男選び過ぎてみんな世界に旅立っちゃうんだよね!」


そう語りだした妹たち。

妹たちのいう通り。

中学3年のときにできた同級生の初彼氏は、サッカーでイタリア留学をするといって中学卒業と同時に日本を離れた。

高校に入ってできた彼氏は、なんと渋谷でスカウトされて芸能界入りした。

今もときどき『準主役』的な配役でテレビでお目にかかることがある。

大学の時の年上の彼氏は、青年海外協力隊に参加することになって旅立ったまま。

そして社会人になって付き合うことになったリョウ。

思えばどの彼氏ともいざこざで別れたわけでもなければ、嫌いになったわけでもない。

そもそも『付き合うのやめよう』とかっていう終わりの合図があったわけでもない。

『お互いそれぞれの道でがんばろう』的な別れ。

そう考えると、今までの彼氏が全員一度に日本に帰国とかしたらどうなるんだろう。

……なんてありえないけれど。

だから、今日のイサムとの別れは私にとって初めての『本格的な別れ』。

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