私の好きな人は駐在さん
「あのー……。」
ん……?
これは……夢か?
「そこのあなた、ちょっといいですか?もしもし??大丈夫ですか?」
何だか声が聞こえる。……男の人の、声。そうそう。ちょっと低いんだけど、何だか青年っぽい感じも残しつつ、聞いてて心地よいような……
「ちょっと!!あのー、御自宅どちらかわかりますかー?」
……ん……何だろ??声は聞こえるけど、何を誰にいってるのか、分からない。
やっぱり、夢なのかな……
そう思いつつ、鉛と化したのかと思われるくらい重くなった瞼を、渾身の力を込めて上に上げてみる。
「もしもし、大丈夫ですかね?」
目の前には、ぼんやりと、人の顔が。
誰だっけ?ええーっと、由紀?かな……でもそれにしたら髪が短いか……あれ?男の人か……な??あ、
「デスク……??」
デスク……今度の原稿の締め切りを催促しにきたのかな。なにも、今じゃなくったっていいのに。もう、今はそれどころじゃないんだから……
「締め切りには間に合いますから……今は……勘弁を……。」
「あ、あのぉ……デスクじゃないですよ、とにかく、大丈夫ですか?ちょっと、立てますかね?」
ん……?何を言ってるんだ?もう……頭がガンガンするのに……!
「じゃあ、何なんですかああ!」
冴えない頭をぐっと、あげて、目の前にいる、このぼんやりとした人影に照準をあわそうと、ぐっと目に力をいれて見ようとした。