私の好きな人は駐在さん
私は手短に自分の今の状況を説明した。
一部始終を黙って聞いていた由紀は、大きくため息をついて、
「わかった。今から行くから待ってて。」
そういって、電話を切った。
ふーっ、と私は軽くため息をついて携帯をポケットにしまった。
すると、電話をかけている間、奥の部屋に引っ込んでいた警官が、
「へぇ、あのー、なんですかね、今流行りのスマートフォン?とかいうの?ああいうの持たないんですか?」
と、私の携帯を一瞥して言った。
先ほどの尋問(?)の時とはうってかわって、とても優しげな話口調で、穏やかな声色で話しかけてきたので、(かといって、尋問の時も声をあらげるなどと言ったことは全くなかった。)また、きゅっ、と胸を締め付けられるような感覚に襲われた。
「あっ、私は……機械音痴な人間なので、こっちの方が、使いやすいんです……」
消え入りそうな声で、ポケットの上から折り畳み式携帯の輪郭をなぞった。
「あ、そうなんですか。いやいや、若い人はみんなそういうものに敏感ですから、てっきりそういうものなのかと思ってしまいました、すみません。」
そういって、彼は恥ずかしそうにはにかんだ。
しかし、「若い人は……」なんて言いながら、彼も決して年がいっているようには見えない。見た感じでは、20代後半から30代前半といったところだろうか。
私が不思議な顔をしていたせいか、彼は咄嗟に、
「あ、気にしないでください!僕、突然変なこと言ってしまうことがあるので!」
といって、いやー、参った!といわんばかりに、前髪を片手でかきあげた。