私の好きな人は駐在さん
後ろを振り向くと、優しい微笑を顔に湛えた彼が、こちらをみていた。
奥の部屋の入口付近にある、大きな机にそなえてあるパイプ椅子に腰掛けていた。
彼は先程から、そこと奥の部屋を忙しく行き来していたのだ。
「いえ…残念ながら、まだみたいです。」
私はスカートの裾を下に引っ張りながら、裾先に目を落としていった。
「そうですか。では、そこに腰掛けて待っていてもらって結構ですよ。」
そういって、彼は、右手を前に出し、私が先程尋問(?)を受けた時に座っていた椅子を指した。
この部屋には、入り口に入ったところに、小さな机が一つ。それを挟むように、足にコロコロと動くキャスター付きの椅子が2つある。
先ほどここで、私と警官は問答を繰り広げていたのだ。
奥に進むと、関係者しか入られないような部屋に続いているのであろう、ドアがあった。今はそこは開けっ放しになっており、そのドアの前にほんの小さな
と、パイプ椅子が一脚だけおいてある、といった構図になっている。
壁一面には、防犯防止のポスターや、指名手配犯のモンタージュ写真などがぺたぺたと貼られていた。
私は言われたとおりに、元座っていたところに座り直した。
入り口側を向いて座っていたので、彼の顔は見えない。
背後に彼の気配を感じつつ、私は俯いて、キャスターのついた椅子でコロコロと小さく動いた。
何か、話そうかーー。
ふと、そんな思いつきが頭に浮かんだ時、